今日の映画:300 [スリーハンドレッド]

冬頃に本国版のトレーラーを見て以来、これは絶対に観に行かねばと思ってた『300』を観てきました。期待通りの素晴らしい作品でした。

古代ギリシャの軍事国家スパルタがペルシャの大軍相手にたった300人の兵で戦いを挑み、3日間踏みとどまった末に全滅したという「テルモピュライの戦い」の話ですが、予備知識ゼロでも全然オッケー。戦いの背景について最初の30分くらいでわかりやすく簡潔に説明してくれます。

まずスパルタ王レオニダスの出生から即位までの逸話を語り部に語らせることで軍事国家スパルタの成り立ちを示し、次に降伏勧告に訪れたペルシャの使者をCMでおなじみの"THIS IS SPARTA!"の叫びとともに底なしの穴へ蹴り落として戦いに至る背景を説明し、敵に籠絡された預言者の元を訪れてエロい巫女から意に沿わぬ神託を受け、それに苦悩しながらも自らの信念に従い出兵を決断するレオニダス王の心情を妃ゴルゴとのやりとりで描き出します。この辺は非常に手際がよろしいです。無理矢理連れていったうちの奥さんでもバッチリ理解できてました。

で、そこから後の1時間半は真紅のマントを身に纏った半裸の屈強な男達が持てる力の限りを尽くして闘いまくります。もうムサいとかいうレベルじゃありません。特濃です。もう今年1年分のマッチョは観賞しましたお腹いっぱいですゲフゥといった感じです。

原作のヴィジュアルノベルを強く意識した、というよりは完全に再現しようとしたであろう映像は実にケレン味たっぷりで、全編にかけられたハイコントラストなエフェクトと相まってまるで動く絵画といった感じ。特に迫り来るペルシャ兵の群れを鬼神の如くなぎ倒すスパルタ兵の戦いぶりは、一番絵になるおいしいショットをスローでたっぷりと見せつけて、次のおいしいシーンまでコマ落としで繋ぐというちょっと観たことのない見せ方で堪能させてくれます。制作陣が「クラッシュ」と呼んでいるこの手法、マトリックスのバレットタイムみたいに流行るんだろうなぁ。

いくら手法が斬新でも素材が悪けりゃどうにもならんわけですが、その素材であるスパルタの男達はどいつもこいつも見事なまでのマッチョボディ。極限まで無駄を削ぎ落とした肉体が躍動する姿はまさに生きたギリシャ彫刻。自軍を遥かに上回る敵軍の前進を押し返し、槍で串刺しにし、剣で斬り伏せる様が一々絵になります。
しかもこの男達、闘ってる時はノリノリです。王様自ら先頭に立って槍を片手に殺しまくり。生き生きしすぎです。兵士も兵士で空が見えなくなるほどの矢の雨に晒されながらも笑ってたりします。お前らほんと殺し合いが大好きなんだなと。

歩兵同士の肉弾戦ですので、戦闘の描写自体は結構グロいもんです。血飛沫ドバドバですし、腕やら足やら首やらバンバン飛びますし。でも絵の造りがあまりにもスタイリッシュなためにグロさは全然感じません。真紅のマントを翻しながら渾身の一撃を叩き込むスパルタ兵の姿にはため息すら出ます。なんというか、とんでもない話です。飛び散る血飛沫にきっちりモーションブラーかけてるとことか、もうほんとゾクゾクしてとても困ります。

そんな中で個人的にウケたのは最初の攻勢を無傷で凌ぎきった後のシーン。敵兵の死体を積み上げて「死体の壁」を作るんですが、その「材料」の中にわずかに息の残って いる敵兵がいるのを地道に殺して回っているところがあまりにもリラックスしすぎてて笑えました。我らがレオニダス王は死体の山を眺めながら「いやぁ〜今日もいい仕事しちゃったなぁ」みたいな顔して暢気にリンゴ食ってますし、止めを刺して回ってるスパルタ兵なんて雑談しながらザックザックやってます。お前ら仕事帰りのサラリーマ ンかと。闘いが終われば足元で断末魔の声を上げるペルシャ兵なんぞまるで虫けら程度にしか思ってないスパルタ軍が素敵すぎます。

ヘラクレスの如きマッチョどもがその肉体美を存分に見せつけてくれるスパルタ軍に対し、襲い来るペルシャ軍の方はもう何でもアリ。ほとんど怪獣な巨人兵だの、黄金のマスクを付けた忍者部隊だの、両腕に斧直付けの首切りデブだの、武装サイだの武装ゾウだの、とまぁバラエティ豊かです。(うちの奥さん曰く、「北斗の拳かと思った」。)
こんなの普通に出したらコメディになりかねません。でもこれが不思議なことにちゃんと見れちゃう。対峙するスパルタ兵の肉体が持つ説得力がなんじゃこりゃなキャラクター達の存在をすべて肯定してねじふせてしまうんですよね、これ。

そんなペルシャ軍の中でも最強のキャラクターが、ペルシャ王・クセルクセス。もうね、見た瞬間は言葉が出ませんでしたよ。
サウザー@北斗の拳なんて目じゃない超巨大な玉座の御輿に乗り、全身に大量のピアスと宝石を纏って悠然と現れるその姿はまるで柱の男@ジョジョの奇妙な冒険第2部。実写版究極生命体ですよ。
しかも喋れば蕩けるようなエロい声。なんじゃこりゃ。何もかもがとんでもないです。あの声で「我に跪け。我を崇めよ」とか言われた日にゃあ即跪いて足舐めます。もう大王なんてもんじゃありません。この地上に君臨する神。もはや人間なんぞ超越しちゃってます。なんかその立ち振舞いを見てるだけでなんか言葉にならない声を出してました。嗚呼、素晴らしい。

そんな男達の闘いは、最初こそスパルタ軍の驚異的な戦闘力で互角以上の闘いを繰り広げますが、ペルシャ軍の圧倒的な物量戦の前にジリジリと消耗させられていき、最後には完全に包囲されます。
退却も降伏も許されないスパルタ軍に残された道は闘って死ぬことただ一つのみ。ここらへんの展開は日本人には共感しやすいでしょうね。もうそのまんま武士道ですから。さすが原作者が日本大好き、子連れ狼大好きなだけのことはあります。
私はこういうのはもう慣れちゃってるのでどうということもありませんでしたが、劇場で隣に座ってた若いにーちゃんはこの玉砕シーンで鼻水すすって泣いてました。若いっていいなぁ。
私にはラストよりも隊長の息子のシーンの方ががグッと来るものがありました。ほんと親子ネタには弱くなりました。

というわけでこの映画、映像はカッコいいし、出てくる男達もカッコいいので、マッチョが苦手でなければ超おすすめです。特に「クラッシュ」はマトリックス以来の新しい表現方法としてトレンドになりそうな気がするので要注目です。

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