読書感想文:チャレンジする心

チャレンジする心―知的発達に障害のある社員が活躍する現場から
箕輪 優子
家の光協会
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タイトルだけを見れば「障害のある人たちががんばる話なんだろうなぁ」みたいなイメージですが、読めばそれがとんでもない誤解だということに気づかされます。?

障害者雇用だとかノーマライゼーションだとか、障害を持つ人の社会参加について、私らは言葉に出しこそしないけれども「程度にもよるんだろうけど、正直難しいんじゃないの」とか思っているわけですよね。ましてやそれが「知的障害」ってなことになると「ぶっちゃけ無理なんじゃないの」と。
この本の著者はまさにその「知的障害」を持つ人がメインとなって働く会社を立ち上げたわけですが、冒頭で出てくるのはそんな人たちがパソコンを使って日常業務を行っているという話。それはさぞかし大変な苦労やら何やらがあるのだろうなぁ、と読み進めていくと、おや?となる。
確かに知的障害ゆえの苦労もあり、その中から発見もある。でも基本的な部分は正直意外といっていいほど普通のことばかりなんだよね、これ。

  • 「チャレンジ精神」を評価基準に採用面接を行い、
  • トライアル雇用期間中は実際の作業を通じて社会人として生活することへの習熟を図りつつ、
  • その中で得手不得手などの個人の特性を見極め、本人にとって適性のある業務へ配属し、
  • 共に働く仲間達とのコミュニケーションの中で自主性や助け合いの精神を養い、
  • 仕事に対する公正な評価を行い、それを査定として示すことで働くことへの意欲を喚起し、
  • 与えられた職務の意義とその向こうにいる顧客の存在についての意識を高め、
  • 自分が属する会社とそのビジネスについての理解を深めていく。

見事に普通しか言いようのない話じゃないですか。
むしろ今時これに真正直に取り組む会社の方が少ないくらいじゃない?

じゃあ一体何が違うのか?
それは「とことん向き合う」ということ。

?最初に書いたように、私らは「知的障害」というラベルを見た瞬間に「ぶっちゃけ無理なんじゃないの」と考える。それって要は本人を見もせずにラベルだけ見て思考停止してるんじゃないのかと。
入社以来ずっと人事畑を歩んできた、人事のスペシャリストである著者はそれをしない。評価の対象はあくまで本人自身であって、 それ以外の要素は二の次なんだと。
冒頭のパソコンを使う業務の話にしても、工具を使う作業にどうしても馴染めなかった社員にコンピュータスキルの可能性を見いだして、実際にそれを試してみたことから生まれたもので、思考停止している私らみたいな人間であれば「PCって、そりゃいくらなんでも無理でしょうよ」としかならないだろうなぁ、と。

偏見を持たず、憶測に頼らず、ただただ目の前の人間を見て、その人間の力を理解し、そして信じる。?著者の考え方はすっごいシンプルで、そこには障害者雇用だのノーマライゼーションだのといったお題目は何の意味もない。

著者はそんなお題目に囚われて、目の前の人間を見ることもなく思考停止している人が如何に多いかということを切々と語っている。
養護学校や職業訓練センターの職員、障害者雇用の主体である企業の人事担当者、そして両親。日々障害者に接する人たちの中にも少なからず思い込みや偏見があり、それが障害者自身の可能性を殺してるんじゃないのか、と。

ここまで読んで気が付いたんですよ。
あぁ、この「チャレンジする心」って、私らにも言ってるのか、と。

就労経験の無い人間が仕事に就くという事がチャレンジだというのは言わんでも判る話な訳で、実際に彼らはチャレンジしてる。むしろチャレンジしてないのはそれに対して理解する努力をしない私らなんじゃねーのかと。
偏見を持たず、憶測に頼らず、ただただ目の前の人間を見て、その人間の力を理解し、そして信じる。それにチャレンジすべきは私らなんですよ、と。?

腑に落ちた瞬間にガツンと来ましたよ。

しかもこれって、突き詰めれば対人関係における普遍的な話なんですよ。
相手が障害者かどうかなんて関係ない。あんた、ちゃんと人と向き合ってんの?って。?

長々と書きましたが、障害者に接する機会がある人もない人も、一遍読んでみることをお勧めします。
いい本ですよ、これ。

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